大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)39号 判決

成立に争いのない甲第二号証の一(本願特許公報)によれば、本願発明は、プレストレスコンクリート管の成形方法において、<1>鉄筋篭をコンクリート層厚の中央より外側に配置すること、<2>膨脹コンクリートを用いること、<3>遠心力成形すること、の三要件からなつていることが認められる。そしてその各要件がそれぞれコンクリート管製造上公知技術であることは原告の自認するところであり、後記のように、右<2>の方法をプレストレスコンクリート管製造に採用することは当業者の予測の範囲内にあつたから、プレストレスコンクリート管を製造するためにこれら公知の三要件の結合に想到すること自体は、当業者に格別困難があるものということはできない。

さて、前掲甲第二号証の一によれば、本願発明により製造されたプレストレスコンクリート管について、試験例Iにおいて、養生中においてコンクリートの膨脹力によつて拘束鉄筋に生ずる歪の測定が普通コンクリート管との対比で行われ、その第3図(別表(〔編註〕省略)1)に示す結果が得られたこと、試験例Ⅱにおいて、外圧試験荷重により材令二八日の管の内面に初亀裂が発生するまでの撓み量(歪量)の測定が普通コンクリート管との対比で行われ、その第4図(別表2)に示す結果が得られたこと、試験例Ⅲにおいて、外圧試験荷重により材令二八日の管の垂直方向に生じた撓み量の測定が普通コンクリート管との対比で行われ、その第5図(別表3)および第6図(別表4)に示す結果が得られたこと(以上は前記要件<2>を欠く対照管との比較試験結果)、試験例Ⅳにおいて、遠心力成形後における管壁各層のコンクリート材料の分析が振動詰め成形の場合との対比で行われ、そこの表(別表5)に示す結果が得られたこと、試験例Ⅴにおいて、コンクリートの単位膨脹セメント量と導入プレストレス量との関係の調査が行われ、その第9図(別表6)に示す結果が得られたこと、および試験例Ⅵにおいて、外圧試験強さの測定が振動詰め成形で製造されたものとの対比で行われ、その第10図(別表7)に示す結果が得られたこと(以上は主として前記要件<3>に関する試験結果)が、それぞれ認められる。

また、成立に争いのない甲第一一号証(鉄筋篭の位置による外圧強さ比較試験表)によれば、本願発明により製造された管について外圧試験強さの測定が対照管との対比で行われ、そこでの表(別表8)および参考図(別表9)に示す結果(前記要件<1>に関する試験結果)が得られたことが認められる。

ところで、膨脹コンクリートを用いて管を成形し養生すると、その間において、管壁全体に膨脹圧を生じ、これに応じて管壁に内蔵する鉄筋篭が引き伸され、その反力として生ずる圧縮応力がコンクリート内に蓄積され、その結果、高強度の管体が形成されることは出願当時当業者が希望的に予測していたことについては、当事者間に争いがない(第二の六)。そしてまた、膨脹コンクリートを用いて管を製造する場合において遠心力成形法を適用すると、高比重成分が外層に、低比重成分が内層に偏在することは当業者が出願当時容易に考えられることであつた点についても当事者間に争いがない(第二の五)。そうすると、本願発明において前記要件<2>、<3>により膨脹コンクリートを用いて遠心力成形をすると、振動詰め成形の場合と異なり、比重の高い骨材(砂、砂利)が管の外層へ、比重の低い膨脹材が管の内層へそれぞれ移動し、このため膨脹材が内層に偏在し、さらにこの場合、要件<1>の鉄筋篭をコンクリート層厚の中央より外側に配置すると、これを内側に配置した場合に比べて、膨脹コンクリートをより多量内包し、鉄筋篭の圧縮応力を高めることになるのは当然の理といわねばならない。すなわち、前記<1><2><3>の要件からなる本願発明は、プレストレスコンクリート管の原理に照らし、管の内層に偏在する膨脹材が外側方向へ膨脹圧を生じ、これに応じて膨脹コンクリートを多量に内包する鉄筋篭が強く引き伸され、その反力として圧縮応力がコンクリート内に多く蓄積されるため、高強度のプレストレスコンクリート管が得られるわけであつて、その構成上から当然予測できるものといわねばならない。また前記認定の作用効果も、右の予測の範囲において実験によりこれを確認した程度の域を出ず、顕著なものとはいえない。そして本願発明は、以上認定のほかに格別の技術的解決を開示しているわけではないから、その進歩性を否定した審決の判断に原告主張のような違法はない。

よつて原告の本訴請求は理由がないから棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

型枠内に鉄筋篭を配置し、コンクリート層厚の中央より外側に上記鉄筋篭が配置されるように型枠内に膨張性コンクリートを投入し、しかるのち遠心力成型することを特徴とするプレストレスコンクリート管の成型方法

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!